山からのたより その11 ~養沢の林業このごろ~
池谷キワ子
今年の春は歩調がゆっくりです。山は春の到来が遅いとおもわれるでしょうが、
植物によっては感度が高く、もう芽吹いて枝先を緑に膨らましているのがニワトコなどです。
今回のおたよりは冬の養沢と林業アラカルトです。
「冬は山仕事、お暇でしょう?」といわれます。が、どうして一番忙しいときです。
灌木や下草は枯れ木状態で作業はしやすく、木々は水を吸い揚げていない時期、
枝打ちや間伐の適時なのです。晩秋に「ボランティアそらあけの会」では
40年以上も藪状態だった放置畑を刈り払いしました。
1月からは、昨シーズン以来高い枝打ちに挑戦している井戸入り沢での作業になりました。
このごろは15人ほどが月2回のわりで、元気で楽しくやっています。
枝打ちをしないメンバーは大刈り(林内の灌木伐り)です。

写真:篠だけ藪を伐り払ったそらあけの会

写真:枝打ちはラダーとステップで6メートルの高さまで。
ほかに木登り機も使っています。
ボランティアとは別に、林業のプロに間伐などの山作業をお願いしています。
東京都認定林業事業体の築地林業です。
若者2人組の彼らは、1月初めから作業路づくりに取り組みました。
私の家の林地は小区画であちこちに飛んでいるので、近代林業の命綱である作業路を、
いままでほとんど開設してきませんでした。
この作業路とよぶ小規模林道は、林業を営む上での「魔法の杖」ともいわれてきましたが、
いまではこれなしでは林業が成り立たない存在になりました。
田邉由喜男氏という名だたる道づくりの指導者が来てくれて、一カ月で1,7キロが
完成してしまったのです。その速さにはほんとにびっくりでした。
このごろでは、この作業路造りに行政から補助金もいただけて、森林所有者の負担が
軽く済むようになってきたのはありがたいことです。
この路を使って材木の出荷が容易になる日を待ち遠しく思っているところです。

写真:見学者に作業路造りのコツを解説する田邉氏

写真:ヘアーピンカーブなので一般車は通行不能です

写真:山に囲まれた養沢集落。12月

写真:岩山迫る家々。2月
養沢は山に挟まれて日照時間が少なく、寒さひとしおの地です。
立春後さいしょの午の日、今年は2月9日がお稲荷さまの祭日「初馬」(はつうま)でした。
祠に旗を奉納し、御幣やで飾り、油あげや小豆ご飯を供えます。


「山眠る」は冬の季語です。養沢住民の愛しの山「大岳山」が枝打ちの井戸入り
山林からも望まれます。「分け入っても分け入っても青い山」(種田山頭火)
- 2013/02/28(木) 11:40:48|
- 山からの便り
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